「なにもない」けれど

「なにもない」けれど

寒風沢島には、立派なホテルはない。娯楽施設もないし、歴史を展示する博物館もない。豪華な食事を出すレストランもない。おおよそハコモノと言われるようなものはなにひとつない。

ただ、島には俺達がいる。島と海の楽しみ方を誰よりも知っている。四季を通じて自然を遊び倒す術を知っている。夏場は海水浴とバーベキューだけだと思っているだろう?鱧が釣れる。無人島まで船外機でひとっ飛びすることだって出来る。もちろん春には桜だな。島の米から出来た酒で。

もしこの島を訪ねてきてくれる人がいるならば、俺達は全力でもてなしたい。おおよそ「なにもない」島だけれど、豊かな自然を楽しむためには人間の知恵と工夫がいる。それがこの島にはある。この島でそうやって楽しんでもらえることが、なによりも俺達の喜びになるし、島の再生につながると思うんだ。