あの日の語り合い
軽トラが爆走した田んぼの真ん中を縦断するあぜ道から、前浜へ抜けていきます。
穴から水が出て心配された浜に近いところに立つ苗木も、立派に根を張り芽を出していました。
あの日に半分冗談で語られていたこと。
「来年はここで花見だな!」
「まだ咲かないよ」
「僕が来ないうちに花見しないでくださいよ~」
「花が咲いたら知らせてやるからよ」
あの日には想像でしかなかったこと、絵空事かもしれなかったこと。それがひとつひとつの手によってやがて現実のものになっていくことが、この場所に立つとありありと私の眼前に立ち上がってきます。
「花見ができればいいのか」
そうかもしれないし、そうではないかもしれません。
いま、ひとつだけ確かなことは、あの日この場所に立った人々は、またこの場所に戻る理由を手にしている、ということです。
※写真は、本文の内容とは直接は関係ありません。桜の苗木に愛を語る通りすがりの青年M。



