十八成浜の桜について

関東地方では年明けすぐに一旦暖かくなり、梅が騙されて咲いたりしていた今年の始まりでしたが、立春を迎えてまた冷え込みがぶり返しています。2011年に動き始めた桜onプロジェクトも早12年が経ち、かつてご縁をいただいた各地のアーカイブスなどを見返して整理する作業をしています。

今日のピックアップは宮城県の牡鹿半島にご縁をいただいた「桜on十八成浜(くぐなりはま)プロジェクト」。明治時代に捕鯨基地として栄えた港町に、高知県の捕鯨会社が進出していたことを示す石碑からアーカイブスは始まります。そんな民俗学的とも、地域産業発展史的ともいえる楽しみがあります。桜という木が取り持つ人と人との縁から始まり、気が付けば10年以上の歳月が流れて、当時小さかった苗木が成木になっているはず。

日々の生活に追われながら仕事に、家庭に奔走している私たちは、いつも小さな不安や不満をいくつも抱えながら生きています。一方で、10年を超える時間軸でそこにどっしり立っている木を思い浮かべると、なにか頼もしさというか、確からしさのようなものを感じます。

「日々忙しく都会で生きていると、こうして出会ったことを忘れてしまうかもしれない。でもせっかくのご縁を忘れてほしくない。だから桜を一緒に植えようと思ったんです」

2月の、この底冷えの季節になると、とある方がおっしゃった言葉が、いまでも思い浮かびます。