宮城県の東端

宮城県の東端、牡鹿半島の南西側に位置する十八成浜(くぐなりはま)は、穏やかな湾に面している。

切り立った急勾配の崖に囲まれた小さな入り江が続くこの地域の海岸線には珍しく、広く長く続くなだらかな海岸線の向こうには、田代島、網地島を望む。

震災以前の十八成浜は、白砂のロングビーチが続く風光明媚な「リゾート」のような景観を誇っていた。いま、海岸線に沿って建っていた宿泊施設や民家はことごとく姿を消し、堤防代わりの黒い土嚢が水平線の少し下にぶら下がるように、浜辺に連なって横たわっている。

近隣の鮎川浜同様、古くから捕鯨の基地港として栄えた歴史を持つ十八成浜の神社の境内に佇む大きな石碑。寄進者名の筆頭にあるのは、藤村捕鯨株式会社の名。史実によれば1910(明治四十三)年に高知県からここ十八成浜へ進出した企業とのこと。この碑には明治四十四年二月とあるので、まさに当地へ進出した直後に地域への浸透を図るために守り神への寄進を行ったと思われる。金八十円という、他の寄進者とは比較にならない多額を納めていることからも、土佐から当時の牡鹿半島に進出してきた捕鯨企業の勢いが強かったことは想像に難くない。往時のこの地域の活気が、石碑の向こう側に見えるような、そんな気がする十八成浜である。