参道にあった桜を想う

「震災前はね、この参道の両側に桜の木が立ってたのよ。みんなこの場所の桜が好きでさ。なにかっていうと集まって面倒見てたんだけど、なくなってしまったからね。この前に6mの道路が通るんだれども、そこから鳥居までは自由な土地になるから、そこにまたみんなが楽しみにできる桜を植えたいと、ずっと考えていてね」

及川さんは静かに語る。丁寧で穏やかな語り口は、どことなく荒々しい海の男というよりも商売に関わるお人柄のような気がする。伺うとやはり会社を長らく経営されてきたとの由。

いまはまだ小さな、福島の矢祭から譲り受けた江戸彼岸の子どもを、この地の人々の未来のために大きく成長させたい。

幸い神社の境内の日当たりの良い傾斜地は、豊穣な土で覆われていた。

「この場所に仮植えをしましょう。境内の前の土地を整備できたら、その時にみなさんのいいように本植えすればいいですから」