50年と2分

プロのチェーンソーマンが、木を見上げて、倒す方向を決めてから木が切り倒されるまでの時間。

わずか、2分。

この木が生きてきた時間。

少なくみても50年。

倒れた木の傍らで、及川さんが独り言のようにつぶやいた。

「ありがとうございました」

てんぐ巣病にかかりながら、この春、最後の最後に咲かせた花が、倒された木の上からもたらされた。

奥田さんが、そっと花のついた枝を手にして、微笑んだ。