実在する “時空を超える桜” のはなし

岩手県釜石市に唐丹町はあります。
その本郷地区には見事な桜並木が存在しています。
100本近いその桜たちの多くはソメイヨシノで、樹齢は80年を超えています。
この桜たちは、昭和8年の三陸大津波により大被害を受けた旧唐丹村の復興への願いと、同年の現天皇陛下のご生誕の祝福を兼ねて、昭和9年春、唐丹地区に植えられたものです。
つまり、過去から現代へと繋がれた、そして2度の大津波を経験して来た桜たちです。
この桜並木の周りでは伝統芸能が生まれ、そして無数のカメラのシャッターが切られてきました。しかし、時は刻まれ、その桜たちも年老いて、病にかかっているものがほとんどになっていました。
僕たちが唐丹町と出会ったのはそんな時でした。
奇しくもそれは3・11の後でした。
複数の不思議なご縁が相まって、その時空を繋ぐ桜たちを、地域の人々と一緒にケアして、できる限り未来へ繋いでいく物語が始まりました。
新しい桜たちも植えました。年老いた桜たちの剪定もしました。
幾度となく唐丹町へ足を運ぶ度に感じたのは、
「なんだかんだで、みんなここの桜が心底好きなんだなぁ」というとてもシンプルなことでした。
同じ地域に住まわれている人々といっても、当然ながら被災状況も異なり、住んでいる場所も異なる、年齢も職業も異なる、そんな様々な差異がある中で、こと「桜」に関しては、みなさんの目がとてもまっすぐで、熱い反応が多かったように感じています。
もの言わぬ桜、お金に換算もできない桜、冬は葉っぱもない。
食料にすらならない。
でも、一年に一度だけ誰に何も言われないでも花をつける。
なんとも純粋な「桜」だからこそ、地域のみなさんに愛されているんだなぁ、と感じます。
だからこそ、そのまわりでいろんな動きやストーリーが生まれるんだなぁ〜と。
日本中の桜を見て歩いていると、これは例外なく“桜の力”な気がしてきます。