森と共に

2012.02.11 週があけて、2012年2月20日。森を拓く男達の歌声は今この瞬間も牡鹿半島の空にきっ と響き渡っているにちがいない。僕は遠く離れた大都会東京の昼下がり、パソコンに向かいながらも、目を閉じて、ふと牡鹿半島の方角へと耳をすまして見 る・・・。『ギーーー』と鈍くきしむ音が長く響く。しかし一定ではないそのきしみは、唐突に『バキバキ、ドーン』と大地の震えと共に体感できる音に変わる。僕は両足からその音の響きを感じる。

ふっ、と目を開ける。目の前にはいつものパソコンの液晶画面があいもかわらずまたたいている。変わらない東京港区の午後。でも、この瞬間の僕は、牡鹿の森への束の間の旅を経て、あきらかに数秒前とは異なる、深い深呼吸でもしたあとのような爽快感に満ちている。もう、 この森と共に歩みはじめている自分にふと気がつく。

3月3日、東京からこの森へ旅をする人達はきっとこの感覚に気付くことになる。いや、もっとはっきりとした森の住人にも似た気配すらまとうことになるかもしれない。